前編では、宮城の気候特性に合った断熱性能の基準や、床下暖房システムの仕組みについて詳しく解説しました。
後編では、これらの性能が実際の暮らしにもたらす具体的な効果について、特に健康面とコストの観点から掘り下げていきます。
前編をご覧になっていない方は、こちらから(→【前編】宮城の気候に合った住宅性能って?断熱・気密の基準を分かりやすく解説~高断熱・高気密の重要性)
住宅の断熱性能が健康に与える意外な効果
「断熱性能」と聞くと、多くの方は「暖かさ」や「光熱費の節約」を思い浮かべるでしょう。しかし実は、適切な断熱性能を確保することは、ご家族の健康に大きな影響を与えることが、最新の研究で明らかになっています。
断熱性能と健康の深い関係
近畿大学の岩前篤教授による長年の研究では、驚くべき事実が明らかになっています。
「住宅の断熱性能を上げることで、アトピー性皮膚炎や喘息の症状が7~8割も改善される可能性がある」というのです。
これは決して誇張された数字ではありません。実際の研究データを詳しく見ていきましょう。
断熱性能と健康障害の関係
研究結果によると、断熱性能の違いによって、以下のような健康への影響が確認されています
低断熱住宅(Ua値0.87以上)の場合
これらの健康障害が起こる理由は、主に以下の要因によるものです。
1. 結露とカビの発生
低断熱住宅では、壁や天井の表面温度が低くなり、室内の湿気が結露として発生します。この結露がカビの発生を促進し、室内の空気環境を悪化させます。
具体的な影響:
2. 急激な温度変化による体への負担
低断熱住宅における部屋間の温度差は、人体に大きな負担をかけます。
温度差の実態:
この8~10℃もの温度差が、血圧の急激な変動を引き起こします。
高断熱住宅がもたらす健康効果
一方、適切な断熱性能(Ua値0.4程度)を確保した住宅では、以下のような健康面での改善効果が確認されています。
1. アレルギー症状の改善
岩前教授の研究によると、高断熱住宅への転居後、次のような改善が核にんできました。
これらの改善効果が得られる理由は、以下の環境要因の改善によるものです。
2. 高齢者の健康リスク低減
特に注目すべきは、高齢者の健康への影響です。
ヒートショックの防止:
従来の住宅では、冬季の入浴時に以下のような危険な温度変化が発生。
この急激な温度変化が血圧の変動を引き起こし、最悪の場合、心臓発作や脳卒中のリスクとなります。
一方、高断熱住宅では、
この安定した温度環境により、血圧の急激な変動を防ぎ、安全な入浴が可能となります。
血圧管理の改善:
研究データによると、
3. 子どもの健康への効果
子育て世代にとって特に重要な効果も確認されています。
感染症予防:
睡眠の質の向上:
これらの効果が得られる理由:
断熱性能の投資対効果を考える
高断熱住宅の健康面でのメリットは明らかですが、一方で気になるのが費用の問題です。
実際のところ、断熱性能の向上にかかる費用と、それによって得られる効果について、詳しく見ていきましょう。
初期投資とランニングコストの実態
高断熱・高気密住宅の建築費用は、確かに一般的な住宅より高くなります。しかし、その差額は実際にどの程度で、どのような形で回収できるのでしょうか。
初期費用の違い
30坪の住宅を例に、断熱性能による建築費用の違いを見てみましょう。
一般的な断熱仕様(Ua値0.87)の場合 ※こちらを基準価格とします | 次世代省エネ基準レベル(Ua値0.56)の場合 合計:+210~300万円の追加投資 | 高断熱仕様(Ua値0.4)の場合 合計:+320~420万円の追加投資 | |
---|---|---|---|
断熱材 | 標準的な断熱材使用 | 断熱材のグレードアップ:+100~150万円 | 高性能断熱材の使用:+150~200万円 |
サッシ | 一般的なサッシ | 高性能サッシへの変更:+80~100万円 | 樹脂サッシ(複層ガラス):+120~150万円 |
施工 | 通常の施工方法 | 気密施工の強化:+30~50万円 | 気密施工の徹底:+50~70万円 |
一見すると大きな差額に思えますが、
この投資は以下のような形で回収されていきます。
ランニングコストの削減効果
1.光熱費の削減
宮城県の一般的な4人家族の場合:
一般的な断熱仕様住宅
冬季(12~2月)の暖房費:
月額25,000~35,000円
年間暖房費:
約150,000円
夏季の冷房費:
月額12,000~15,000円
年間総額:
約200,000円
高断熱住宅
冬季の暖房費:
月額8,000~12,000円
年間暖房費:
約50,000円
夏季の冷房費:
月額5,000~7,000円
年間総額:
約80,000円
年間での削減額:約120,000円
→ 30年で約360万円の削減効果!!
2.メンテナンスコストの削減
結露関連の補修費用の軽減:
結露関連の補修費用の軽減
クロスの張り替え
壁の補修
カビ対策
一般住宅では10年で30~50万円程度必要な費用が大幅に削減
設備の長寿命化
エアコンの使用頻度低下による寿命延長
暖房機器の数を削減可能
除湿機の使用頻度減少
3.医療費の削減効果
健康面での改善により、以下のような費用削減が期待できます。
アレルギー関連
薬代の軽減:月額5,000~10,000円
通院回数の減少:年間10~20回の削減
年間での削減額:60,000~120,000円
住宅の長期的な価値を考える
断熱性能の向上は、単なるランニングコストの削減だけでなく、住宅の資産価値にも大きく影響します。特に近年、住宅の環境性能に対する関心が高まる中、この要素はますます重要になってきています。
資産価値への影響
1. 中古住宅としての評価
最近の不動産市場では、住宅の性能が売買価格に大きく影響するようになっています。
断熱性能が低い従来型住宅
高断熱・高気密住宅
2. 住宅ローンにおけるメリット
高断熱住宅では、以下のような金融面でのメリットが得られます。
具体的な試算例
(借入額3,000万円、35年返済の場合)
通常の金利:年1.2%
→ 月々の返済額:約87,000円
優遇後の金利:年0.95%(当初5年間)
→ 月々の返済額:約82,000円
→ 5年間で約30万円の返済額軽減
断熱性能向上のための具体的なステップ
では、実際に高断熱住宅を検討する際、どのような点に注目すべきでしょうか。
1. 優先順位の決定
限られた予算の中で最大の効果を得るために、以下の順序での検討をお勧めします。
最優先項目
- 基礎断熱の採用
- 外壁・屋根の断熱強化
- 高性能サッシの導入
これらは後からの改修が困難な部分であり、新築時に重点的な投資が求められます。
次点の項目
- 床下暖房システムの導入
- 換気システムの選択
- 日射遮蔽対策
これらは、基本性能を確保した上での快適性向上のための要素です。
調整可能項目
- 内装材のグレード
- 設備機器の仕様
- 外構計画
これらは、予算と相談しながら徐々にグレードアップすることも可能です。
2. 具体的な性能選択のポイント
高断熱住宅を実現するための具体的な選択基準をご紹介します。
断熱材の選択
宮城の気候に適した断熱材の選び方
基礎断熱
- 耐水性の高い押出法ポリスチレンフォーム
- 厚さ50mm以上を推奨
- 施工精度が重要
外壁断熱
- グラスウールまたは高性能グラスウール
- 厚さ100mm以上を確保
- 防湿層の適切な施工が必須
天井断熱
- 高性能グラスウールが標準的
- 厚さ200mm以上を推奨
- 結露防止に特に注意
開口部の選択
窓からの熱の出入りは全体の20~30%を占めるため、特に重要です。
樹脂サッシ+複層ガラスの採用
- 熱貫流率:1.9W/㎡K以下
- 気密性能:JIS-A-4等級以上
- 結露の発生を大幅に抑制
まとめ:投資判断のための重要ポイント
高断熱住宅への投資を検討する際の判断基準をまとめますと、
1.長期的な視点での経済性
- 光熱費の削減効果(年間約12万円)
- メンテナンスコストの軽減
- 将来的な資産価値の維持
2.家族の健康への投資
- アレルギー症状の改善
- ヒートショックの防止
- 感染症リスクの低減
3.快適な暮らしの実現
- 室内環境の安定
- 結露やカビの防止
- 静かな住環境の確保
これらの要素を総合的に考慮すると、高断熱住宅への投資は、決して高額なものではないことが分かります。むしろ、家族の健康と快適な暮らしを長期的に支える、賢い選択と言えるでしょう。
相談のポイント
実際に高断熱住宅の建築を検討する際は、以下の点について専門家に相談することをお勧めします。
住宅の断熱性能について、もっと詳しく知りたい方は、ぜひ当社の無料相談会をご利用ください。経験豊富なスタッフが、実際の事例を交えながら分かりやすくご説明いたします。
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